DX、つまりデジタルトランスフォーメーションは、デジタル化時代を生き抜くうえで、どの企業でも推進する必要があります。海外のトレンド上では韓国のようにdxを推進する事例が多く出ていますが、日本ではDXが進まない企業も多くあり、その大きな理由が、dxを推進できる人材不足にあるとされています(JMAの調査では8割の企業が人材不足を課題として挙げる)では、DXを推進する人材をどのように見つけることができるでしょうか。こちらでは、人材発掘・適性・育成・経営陣の心得の3つの側面から考えていきます。
dx推進に資する人材を探す
企業の成長や拡大には、新しいデジタル技術を使って、革新的なビジネスモデルを作っていくことが必須とされています。ですが、日本の多くの企業では、古くてブラックボックス化した基幹システムを使っていることで、新しいデジタル技術の活用がうまくいっていません。新たなIT技術の登場などでさらなるデジタル化が求められる現代では、DXの推進は必須とはいえ、どの企業もdx推進を効率よく進められる人材の不足に悩んでいます。このような事情から、多くの企業ではdx推進に秀でた人材を外部から登用するのが難しいため、主に社内で人材を発掘し、人材育成を進めることが大切です。
DX推進に向いている人材は社内で見極めることができます。対象となるのは全社員です。IT教育の場がなかっただけで、実はDXと相性が良い人材は社内にいる可能性があるからです。一例として、ある国内通信会社では、すでに持っているスキルよりも潜在能力を重視したことで、結果的に幅広い人材育成につながったという成功事例があります。
DX推進担当者の適性
DX推進に向いている人の特徴の一つが、想像力とともに創造力がある人です。DX自体、誰も取り組んだことがなく、明確なゴールはありません。そのため、何に取り組むべきかを想像し、新しい分野を切り開いていく力が必要です。物事の推進が難しい局面でも、リテラシーを持ってブレイクスルーできるリーダーシップの資質も求められます。また、進取の気性があるとdx推進に貢献できることでしょう。DX推進には、新しいことを取り入れ、自社に必要なものかを取捨選択することが求められるからです。さらに、巻き込み力も重視したい特質です。DXは一人で達成できるほど簡単なものではありません。問題解決のプロセスにおいて自分以外の仲間や、時として対立する立場の人も巻き込みながら、社内全体で推進していくべきものだからです。
他に、やる気や意識の持ち方にも注目することができます。仕事に対してぶれない基礎的なモチベーションを持っている人で、失敗した場合にもそれを糧として前に進む強さを持っている人は、DX導入の大きな力となります。姿勢とともに大切にしたいのが、dxを進めるべき分野において専門的な知識や経験を持っていることです。業務に精通している人がシステム化を進めると、現場での使用感がわかるため、より良いものにすることができるはずです。意識の持ち方次第で社会のニーズを考えることができ、サービスの価値提供に反映できるようになります。
このような人材特性を見極めたら、実際にDXを担う役割を決めていきます。DX推進のトップとなるのが、プロデューサーです。プロデューサーには、マネジメント力が求められるとともに、現状を打開するための合理的な思考力を持っている人が適任です。次に、具体的なdxの企画や立案、推進を担うのがビジネスデザイナーです。自社におけるdxの理想像を持って、周りを巻き込みながら物事を推進できる資質が求められます。加えて、ベンダーのサポート内容を踏まえてdxのシステム設計ができるアーキテクトや、dxで用いるAIやIoTなどの技術やデータ解析に秀でたデータサイエンティスト、AIエンジニア、ユーザー向けのデザインを担当するUXデザイナー、そしてシステムの実装・プログラム・インフラの構築を行うエンジニアやプログラマが必要です。
これらの人材は、ビジネスデザイナーが社内で登用できる人を見極めて人材育成したり、外部やビジネスパートナーなどから調達したりします。
dxを推進できる人材に育てる
DXを推進できる可能性が高い人材を見出したら、必要なスキルを身につけられる場を用意します。例えば、座学です。座学ではデジタル分野の知識を身につけて、活用できる土台作りをします。プログラミング開発やクラウドのビッグデータ機能の操作などを実際に行うハンズオン講習でデジタルテクノロジーの活用をイメージできるようにしたり、能動的に行動できるようリーダーシップの育成を行ったりします。なお、ある国内機械メーカーでは、ものづくり技術の高度化とAI活用を考え、大学と連携して企業内大学を作り、数学やプログラミング、機械学習などを幅広く学べる場を作ることにより、AIやIoTを運用できる強い人材育成を行なっている事例があります。
また、OJTを通した研修で実務に生かす訓練ができます。いきなり大規模プロジェクトでの顧客対応を行うのではなく、まず小さいプロジェクトを立ち上げ、状況に応じて最後までやり遂げる対応能力を身に着けることにより、実行力を習得したり、反省点を次に生かしたりすることができます。また、社内外のコミュニティを活用することも重要です。なぜなら、外部のリソースを活用して、最新の技術やサービスについての情報交換ができるからです。場合によっては顧客に対するソリューションの提案にも役立ちます。将来的にDXサービスの価値提供をできるようになるためには、実践を積み重ねるプロセスが必要です。
DX人材に必要なスキルセット
DXに必要なITのスキルセットとして、現状把握や分析力、IT活用のための知識の蓄積、ITの特性を考えた設計力、利用者の目線に立ったデザイン力、IT特有のモノづくりの力の5つが求められますが、このすべてを身につけている人材であれば、とっくにIT業界の上流工程を担っていることでしょう。そのため、これらのスキルセットを分解し、数人がスキルセットの一つまたは複数個を身につけておけば、それらの力を結集して既存の環境でもdxを推進していくことを目標にできます(詳細については経済産業省が公開しているDXの経営戦略や課題の定義に関するレポートが参考になります)
また、スキルセットを分けて複数人がdx推進に携われるようにしておくことにはメリットがあります。何らかの理由で一つのピースが欠けたとしても、他の人材で容易にカバーができ、前任者と同等のレベルに達するまでの時間を短縮できるのです。さらに、多方面から意見できる人材が幾人もいるので、バランスの取れたシステムづくりが可能になります。
経営陣が行うべきこと
DX推進のための人材育成では、経営陣のスタンスもポイントです。経営陣はdxを主導する姿勢を明確にし、具体的な方向性を示し、全社員に協力を求めることが必要です。また、dxを推進するにあたり、各部署のdx推進を担う人材にはある程度の権限を与え、失敗の責任を問わないことも大切です。そうすることで、自由な発想で思い切った施策を打つことができます。主体性を持った働き方ができれば、dx推進のモチベーションを高めることもでき、プロジェクトマネジメントを通してより実効性があるシステムを構築できるでしょう。
DXを推進できる人材育成のために
DXを推進できる実力を持った人は少ないかもしれませんが、潜在能力を持った人は社内にいるはずです。したがって、DXを推進できる人材を社内で見極めて、人材育成を行いましょう。また、自社の実情に合ったシステムを構築することも必要です。DX推進のための人材育成の方法は、企業の数だけあると言えます。そこで、実際にどのような人材育成を行えるのか、問い合わせてみましょう。